特別な夜のネタは、結構たくさんあるわよ。ホリ子が30代男性と付き合い始めた頃の話。結構昔の話よ。
何度かデートしてそこそこ楽しくて、プラトニックな関係の恋人っていう感じになったの。一週間先の夜のデートのお誘いを受けて、そろそろかなって思って、期待してた。
だって、彼、
「特別な夜にしようね」って言ってくれたし、「一生の思い出にしよう!」とも言ってくれた。
だから、「泊まりもOKだよ」って伝えた。
私は期待したわ。きっと素敵な夜景の見えるシティーホテルの上層階のレストランで、その後部屋に誘ってくれるのかなと思った。美味しい料理と、素敵な夜景、そして素敵な部屋で一緒に過ごす。腕枕をしてもらって、胸に飛び込みながら寝る。寝てる私の姿を見て、肩が布団から出てたらそっと上げてくれる。寝てる間に、そっと手を繋いでくれる。
愛に満ちた時間を、共有できるのかしらって期待した。
待合せ場所が池袋のメトロポリタンだったわ。あそこのレストランかなと期待して、ロビーで待って合流したら、なぜか一緒に外にでちゃった。
「あれ?」
「ん?迷ってる?」
しばらく歩いて、〇〇の瀧っていうチェーン店の居酒屋についた。
「ん?何か違うな・・」
焼き鳥を食ったわ。意外とマグロもうまかったわ。純米大吟醸じゃなくて清酒をぐいぐいいったわ。そして、満腹になった。
満腹中枢が刺激されて、「もう、どうにでもして」って思ったわ。ある意味、「諦め」よ。期待感が絶望感に変わる時によくある感情の揺れよ。
そしてついにホテルに泊まったの!
古びた安いラブホテルだった。和式トイレ付きの。
一生の思い出になったわ。
小丸ホリ子
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