私はね、そもそもあなたの奴隷じゃないのよ。
結婚相談所にマッチングしてもらったんだけど、電話に出た瞬間に、ダメだと思ったわ。
「ホリ子と申します。今、お待ち合わせ場所におりまして、田中さんはどちらにいらっしゃいますか?」
「近く・・・」
お?ネタか?
「わかりました」と、
ぶりって電話を切って帰ろうかなと思ったけど、なんだかネタになりそうなので、ぶりって出ないように、お腹が痛いのを我慢したわ。
「どんな格好をされていますか?」とか私が主導しつつ、聞いたんだけど、「黒のコートに黒のスラックスに、黒の靴」とさ。
「ですますとか使えねえのかよ・・・」と思ったと同時に、
「カラス?」
そう、カラスが頭の中に飛んでる感じになったわ。「あ〜、今日はカラスと食事ね」
周りを見回したら、「カラスばっかじゃ〜ん」、みんな似たような格好してるし・・・って見回していると、私の頭から足先まで舐めくりまわすような目で見ているメガネをかけた、黒っぽいのがいた・・・・
ぶりって出ないように我慢しながら、なんとかカラスを見つけたさ。
会った瞬間、彼の本質がわかった気がしたわ。
くだらないプライドの塊みたいな、なんだか黒いプライドの「汚れ」みたいな感じで、中はすっけすけなんだけど黒で塗り固めたみたいな・・・
あ、でもね、なんだかそこそこ大きな会社の役員さんって聞いたので、紳士かな〜なんて思ったけどね・・・ただ、偉そうなだけだったわ。というのも、会った瞬間自己紹介することもなく、「どこ行く?」って・・・
「おい!タメ口かよ」
「やっぱり、ですます使えないか・・・」
と思ったけど、それもぶりって出ないように我慢してね、適当なイタリアンに入ったわけ。
注文時にもね、
「任せるよ。好きなの頼んで・・・」
配膳された料理には、カラスは手をつけないわけよ。しばらくして気がついたの。
「あれ?要は、私に取り分けろということ?」
まあ、一応ね、私も食べたかったからさ、取り分けたわよ。大人だし。だけど、その男、踏ん反り返ったまま。
「婚活してるんだよね?それで女をゲットできると思ってるのかしら・・・」。
「私、亭主関白を実現するために調教されてるの?」って思ったわ。
会話の中身は、当然・・・当然に・・・会社の愚痴よ。お決まりよね、こういうタイプ。
小丸ホリ子
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