ホリ子はね、いろいろ結婚相談所に登録してるの。もちろん結婚したいと思ってるわ。いい人がいたらね。

ただバツイチだし、もうね、前の夫を超えるくらいの人じゃないと嫌だし、尊敬できる人じゃないとね、ついね、からかっちゃうの。西日本では、おちょくるっていう表現ね。

40代半ばの男性を選んだわ。BMIがぽちゃだったし、この人はモテないだろう・・・という中でたまに磨けばダイヤがいるものよ。期待はしないけど、まあネタもほしいし。

ある東京西側の駅だったわ。新宿から何本かびよ〜んと伸びている私鉄の駅よ。なかなか通よね。ターミナルよりも私鉄の駅。まあ、使ってる路線がきんたま同じだったし、まあいいかと。まあ、リスクといえば、ストーカーだけど、結婚相談所が間に入るから大丈夫かな・・

会った瞬間、あれ？60歳？ってなったわ。名前が確か白井さんだったんだけどさ、白髪がすごかった。ロマンスグレーとか最近は表現されているけど、ロマンスをとったやつ。鼻毛ももちろんびよ〜んとグレーだったわ、ロマンスをとったやつね。それに少し臭い。

格好はまずすばらしかったわ。

スロットから帰ってきた感じだったし、逆に「ネタげっと〜！！！」って少し興奮したくらい。具体的に服装を表現するとね、不正論文がバレて懲戒免職をくらった元学者さんみたいな格好・・・うん、わかりにくいね。

ただ一言、その格好を見て発すると、「陸軍か何かの人ですか？」。

挨拶の時からね、目を合わせてくれないのが、なんというかかわいいというか、奴隷っぽいというか・・・

予約してくれていたお店は・・・と思ったけど、予約の仕方を知らないようで、行き当たりばったりの普通の居酒屋に入ったわ。まあ、普通の大人なら、レストランでしょってところなんだけど、やっぱりグレイは違うわ。学生さんが使うような居酒屋。ほら、馬刺しとか黒くなったのが出てくるお店。

会話がなかなか面白かったわ・・・。なんたって無言よ。

もうね、私も我慢比べしちゃったわ。あなたが結婚できない理由は、いっぱいありすぎるけど、まず会話ができないとね。。。ちょっと上から目線で申し訳ないけど、もうね、面と向かって30秒で「無理！」ってなるやつ・・・・すごいわ。

何を話していいのかと悩んでいるのね・・・わかるわ・・・「もそもそ」していらっしゃるし・・・

会話の講習会とか、グループカウンセリングとかに行った方がよいんじゃないのっていうレベルよ。12分くらいだったらしら・・・、「う〜」とか「ん〜」とかの発音が聞こえるんだけど、私は「うんこ」じゃないわよって心に思いながら、我慢比べよ。

わたしだって、相手が話さないなら、話さないわ。

そうそう、もしこれがホリ子じゃなく普通の女子だったら、きっと「私ってブサイクすぎて話にならない」・・・なんて思うんじゃないのかな。ホリ子は、逆にこの無言の時間を楽しんじゃうけどね。

でね、結局12分1秒くらいになってね。

「ぼ、僕は結婚相手になりますか？」

ってきたわ。

「あら、もうプロポーズ？」って思ったけど、なかなかの「通」よね。「お通じ」系かな。下を向いたまま、声は小さく、「ぼふは、は、は、けっっくんはいへにないますか・・・」

わかるわ・・・あなたのこと、わかるわ・・・。私と結婚したいのね。

雨の日のこの無駄な35分を、どう賠償してもらおうかと思ったけど、面白いサンプルが取れてよかったわ。。。って前向きに生きていかないとね。