婚活会社からある種のお見合いの話がきてね、とりあえずホリ子さんの男性の条件にあってるし、一度見て欲しいからデートのお約束をとらせていただけませんか?って連絡がきたのよ。
まあ、こういう時って「ネタふってきたわね」なんて思うのが平常運転なんだけど、面白いからいつも受けることにしてるの。
待ち合わせ場所が、新宿アルタの隣あたりのgucciの前っていう指定だったのね。シティホテルじゃないからお店の場所って大丈夫かしらなんて不安になるけど、レストランの選択もまた、男性の質感を試す絶好の機会・・・そう思って、マイナスの意味で期待したわ。
お見合いデートの前日になって、婚活会社から来た連絡がさ、
「タクさんがおっしゃるには、季節も暑いので近くの日陰でお待ちいただき、お時間になったらそちらからお電話くださいとのことで、よろしくお願いいたします」って連絡がきたのよね。
「言われなくてもそうするし、19時待ち合わせだし日陰も何もないしさ、この細かい指示はなんだろう」なんて思って、一応婚活会社の担当者さんに「大人の私に、細かい指示をありがとうございます!」って嫌味の連絡をしておいたわ。
細かいのを思いやりと勘違いするのが、きもい男の特徴なんだけどね。
わかるわかる・・・担当者さん、辛いのね・・・女性からクレームがたくさん来たのね・・・
実際電話して会って見たら、お写真通りで、神経質でなんか幸薄いというか・・・。多分、体の細さが余計に不幸そうに彼を見せているのかな・・・
とりあえず挨拶して、普通に今日は楽しそうなところを予約しました・・・なんて言ってくれるので、「???」ってなって楽しいところ?・・・少しだけ下半身がムズムズってしたけど、「こいつには抱かれたくない!」って第一印象で決めちゃってるし・・・
結局ついたところが、なんと「洞窟居酒屋・・・」
「お前は学生かよ・・・」
そう思った瞬間から、自己紹介がいきなり始まったわ。まず座らせてよ・・・
何かもそもそとカバンから取り出してね、書類が5枚ほど。
「なんじゃこりゃ〜!!!」
初めてのパターンで期待大!・・・と期待しつつ内容を読んで見たら、自己紹介とおつきあいの条件が書いてあったわ。フォントサイズは20くらいの大きさ。条件交渉兼打ち合わせデートのパターンはよくある話だけど、まさかプリント5枚とは・・・いやそこじゃなくて紙で持ってくるのが珍しい。「おー。これで女性を口説けるとでも思っている時点で、おもしろい!」って思ったわ。
1ページから3ページまでは、自分の略歴が書いてあってね、タクさん、急に肘をついて、頭を斜めにして私の目線より少し下に目線をおいて、若干上目遣いで、斜めってる状態で口をパクパクしはじめたのよ。瀕死の状態の動物かと思ったわ。仕草も、見た目も、プリントも気持ち悪さが埼京線!
不思議な体勢のまま、自己紹介ターイム!
ずっとしゃべり続けてとりあえず30分たったところで、茶髪ピアスのバンドマン店員に促されて注文。
飲み放題と、まずい料理が何品か。タクさん曰く、あまり食べないのでどんどん注文してください!だって・・・「いや、安いご飯はね、体に悪いから」なんて言えないしね、飲み放題でカクテル頼んだら、ただのかき氷のシロップに大五郎を混ぜた感じだと想像できるしね・・・
甲類の焼酎は無理だし・・・一応喉が渇いたから飲んだけどね、やっぱり具合が悪くなるよね・・・
それはさておき、料理が来てからもさらに30分話続けるつわもの。料理には一切手をつけないので、当然私も手をつけない。料理は冷めてしまっているし、食べる気にもならない。
1時間30分の自己紹介タイムだったけど、ずっと昔のご職業・・・ブイブイ言わせていたの時の話ばかり。有名人を知っているとか、よく仕事の依頼が来ているとか、事あるごとに昔の栄光に関連付けるわけ・・・今はタクシー運転手をやっているけどいずれ現場に復帰するらしい・・・
多分、そのコミュニケーションセンスだから「干されたんじゃないの?」なんて思ってしまったけどね。
今が納得いかない人生だから過去の栄光にすがる気持ち。過去のプライドが邪魔をして、現実が見えないパターン。それはね、「今現在は、あなたの時代ではない」という証拠。謙虚に認めて新たな自分を探すのが、人生の成功戦術だとおもうわ。まあ、そんな話をしてもきっと聞く耳持たずだと思うけどさ・・
1分にまとめてもらいたかった、1時間30分の演説が終わったら、
「ホリ子さん、今度はホリ子さんの自己紹介をお願いします」だって・・・「同じような感じで」・・・
よくよくプリントを見ると、「これからのこと」と題して、
(1)まずはお互いを知る
って書いてあって、10個くらいあった。もしかして10個くらいこの洞窟でやるつもりかしら・・・
と、少し相手にしてやるかと思った瞬間、
「年齢は◯◯ですか?」
「趣味は◯◯ですか?」
「仕事は◯◯ですか?」
「ご家族は◯◯人ですか?」
とプロフィールがあっているかどうかの確認作業を、タクがはじめたわけ。これってちょっとでも間違っていたら婚活会社にクレームでもいれるのかしら、なんて思って、少し状況も変化していて若干古いけど、全部OK!!!!にしておいた。
さすがに、まともにコミュニケーションがとれないし、時間の無駄と判断。多分このまま10時間くらい拘束されそうだと思ってね・・・お開きモードに入ったわ。ホリ子のお開きモードはね、若い女がやる下を向いてスマホいじりとかじゃなくてさ、説教モード。
あ、そうそう本を読む女性もいるわよ。次回のネタね。
タクからは、ネタは充分にもらったし、さっさと切り上げるために、ホリ子の説教モードに突入。とりあえずデートの仕方がおかしいとか、プリントアウトは気持ち悪いとか、斜めしたから見上げるようにみないとか、ほおに手をつけたまま喋らないとか、人の気持ちを考えるとか、レストランの選択の場所とかが「イケてない」ということをお伝えして、10分ほどアドバイスして帰らせてもらったわ。ほんと疲れたわこれ。
とりあえず婚活会社の担当者には、「もっとネタ頂戴!」って依頼しておいた。
小丸ホリ子
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